暮らしに役立つ医療のおはなし 7

胃十二指腸潰瘍と上手に付き合うために(1)胃十二指腸潰瘍の治療と再発防止 わたひき消化器内科クリニック 綿 引 元

 胃十二指腸潰瘍は一般的な良く知られた病気です。皆さんの周りにも、必ず一人や二人は、この病気に悩んでいる方がいらっしゃるかと思います。昔から「胃は心の鏡である」と言われていますが、現在の複雑な厳しい社会状況の中には、いろいろなストレス因子が満ちあふれており、常に激しく「胃」が痛めつけられています。実際に、労働条件のきびしい夜勤の多い職場では、胃十二指腸潰瘍の頻度が高いと言われていますし、受験地獄の中で、小中学生の胃十二指腸潰瘍も増えています。

(1) 胃十二指腸潰瘍とは?

 胃十二指腸潰瘍は、簡単にいえば、胃や十二指腸の壁の一部がえぐれて傷ができる病気です。傷の深さもいろいろあり、粘膜だけが欠損し浅い傷をつくったものから、胃と十二指腸の壁をつらぬいてしまう深い穿孔性のものまであります。

(2)胃十二指腸潰瘍はなぜできるのか?

 胃潰瘍と十二指腸潰瘍はともに消化性潰瘍と呼ばれています。「酸なきところに潰瘍なし」という言葉があるように、胃液と密接な関係を持っているとされています。胃液の中には、塩酸とペプシンという攻撃因子が含まれています。胃には粘膜抵抗という防御因子があり、胃液の中の攻撃因子から胃壁を守っています。ところが、ストレスなどによって胃や十二指腸の粘膜抵抗が弱まり、防御力が低下しているところに、強い消化力のある胃液が作用すると、胃壁や粘膜が傷つけられて潰瘍ができます。また、最近ではヘリコバクター・ピロリという胃壁にいる細菌が潰瘍の発生や再発に関連していることもわかってきました。
 潰瘍には急性潰瘍と慢性潰瘍があります。急性潰瘍は、いろいろなストレスや熱傷、脳出血などに続いて起こったり、鎮痛剤や高血圧の副作用として発生することがあります。慢性潰瘍は再発を繰り返すことが多く、同じ痛みを何度も経験する患者さんもいらっしゃいます。

(3)胃十二指腸潰瘍の症状は?

 代表的な症状は腹痛です。特に十二指腸潰瘍では空腹時の腹痛、とりわけ夜間の腹痛が多くみられます。この場合、食事を取ると腹痛が治まることがあります。痛い場所は「みぞおち」に多く、時には背中や胸の方にひろがることがあります。潰瘍が深くなって穿孔などを起こすと激しい痛みを感じ、身体を動かすこともできなくなります。最近では集団検診や人間ドックなどで腹痛のない潰瘍もしばしば発見されます。
 潰瘍からの出血もしばしばみられます。多量に出血すると、暗赤色の血液や血のかたまり、コーヒーのような胃の内容物を吐いてしまったり、コールタールのような黒い軟便が出ることもあります。この場合は一刻の猶予もできません。急激に貧血が進み、ショック状態になり、意識を失って生命の危険に陥りますので、直ちに病院を受診しなければなりません。
 少量の出血の場合は、便の色は変わらず黄色の普通便ですが、検便をすると潜血反応が陽性になります。大腸や直腸、肛門からの出血の場合は比較的新鮮な血液が便とともに排出されるため、容易に区別できます。「便は健康のバロメーター」ですので、普段からしっかり便の状態や色を観察しておくことをおすすめします。
 そのほかの症状としては、特に十二指腸潰瘍では、食物の通りが悪くなって吐き気がしたり、おう吐することもあります。食後のもたれ感、腹満感、腹部不快感なども現れます。胸やけや酸っぱい水が上がったりすることもあります。

(4)ストレスと胃十二指腸潰瘍

 胃十二指腸潰瘍の最大の原因はストレスであると言われています。職場や家庭での様々な問題、多忙による不規則な生活などが病気を引き起こします。ストレスの原因を取り除くことは困難ですが、自分なりに気分転換をはかり、趣味の時間を持ったり、軽いスポーツをすることで、リフレッシュすることができます。しかし、過労が続いた時には思い切って休むことが大切。規則正しい生活を心がけ、睡眠を充分に取るようにしましょう。食事の時間もできるだけ規則的に。どうしても食事が不規則になる場合は、上手な間食のとりかたを工夫すると良いでしょう。
 

ストレスと上手につきあい、規則正しい生活をすることで、胃十二指腸潰瘍の発生や再発は防げるもの。治りやすい病気ですので、早い段階で発見すれば、苦痛も少なく短期間で治癒します。仕事が忙しくて胃の調子が悪い時は、なるべく早めにご相談ください。
 

次回は胃十二指腸潰瘍の治療と再発防止、ヘリコバクター・ピロリについて説明します。


 

内視鏡検査を体験して 豊橋市 古市さん

 7年前に他の医療機関で大腸と胃の検査を受けました。その時は全身麻酔を使ったため、検査後身体がだるくなり大変でした。胃腸が弱いため定期的に検査をしたいとは思うものの、麻酔は怖いし、麻酔なしでは痛そうだし、とためらっていましたが、「大地」で綿引先生が「胃カメラは怖くない」と書いておられるのを見て、思い切って受けることに決めました。
  検査は、まず喉への簡単な麻酔で始まりました。横になったらまずはリラックス、そして「息を吐いて」と言う先生の合図で息を吐きながらカメラがのどの奥に入っていきました。先生に「息を吐いてね」と励まされているうちにカメラは無事胃の中におさまり、思ったより随分楽なのにびっくり。カメラをはずす時には、ゲップが出て大変でしたが、15分間の検査はあっという間でした。目の前のモニターで自分の胃の内部を見ることができ、その場で先生が説明してくださるので状態がわかりやすく、何より安心感があったのが良かったですね。健康のため、これからも定期的に内視鏡検査を受けたいと思っています。






発行/萩野原メディカル・コミュニティ