トップへ戻る

特集「糖尿病教室」 No.27

高齢者糖尿病の管理と治療について(その5)

わたひき消化器内科クリニック 院長 綿引 元

前回も薬物療法の注意点で低血糖について触れましたが、高齢者の低血糖はさまざまな悪影響を及ぼしますので、解説していきます。

■高齢者の低血糖の特徴

高齢者の低血糖症状は発汗、動悸、手のふるえなどの自律神経症状はあまりみられず、中枢神経症状の糖不足を反映する頭痛、めまい、脱力感、目がボーッとする、眠気(生あくび)、言葉が不明瞭になり動作がぎごちなくなるなどの症状も若い人と比べると少ないです。いっぽう、高齢者では、頭がくらくらする、身体がふらふらするなどの症状が若い人に比べて多いものです。

自律神経症状が消失した高齢者の低血糖では、お金の勘定が出来ない、言葉がすぐに出てこない、会話についていけないなどの認知機能の低下が低血糖症状となりますので、高齢者の低血糖による異常行動は認知症と間違われやすく、注意が必要です。

低血糖時に起こる認知機能の低下は低血糖の対処の遅れになり、重症低血糖を起こしやすくなります。また、認知症を合併した高齢者では低血糖症状を自覚し、訴えることが難しく、重症低血糖になりやすいものです。重症低血糖では意識がうすれ、異常行動、けいれんなどが出現して昏睡に陥ります。なお、自覚症状が少ないことから、高齢者では低血糖を繰り返しやすく、慢性的な低血糖では、意欲の低下、うつ状態、認知症様の精神症状を引き起こすことがあります。


発行/萩野原メディカル・コミュニティ