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大腸癌 〜その予防と治療〜(その1) わたひき消化器内科クリニック 綿引 元

■増えている大腸癌
 大腸癌は、日本人に増えている癌の一つです。50歳から70歳代に多く発生し、男女差はほぼありません。癌の中で、男性では肺癌、胃癌、肝癌に次いで第4位、女性では第1位の死亡原因になっています。

■大腸癌の原因

 大腸癌が増加した原因の一つには、食生活の欧米化により肉や脂肪などを取る量が増え、野菜などの食物繊維を取る量が減ったことが考えられています。また、大腸癌は遺伝的な要因が影響することも多く、大腸癌の約半数は何らかの遺伝因子が関与していると云われています。

■大腸癌とは

 大腸癌は結腸にできる「結腸癌」と直腸にできる「直腸癌」にわけられます(図-1)。大腸癌の約65〜70%は直腸とそれに連なるS状結腸にできます。なかでも、S状結腸癌の増加が著しくなっています。
 大腸癌も胃癌と同じように早期癌と進行癌に分けて考えます。早期であれば転移の可能性は低く、5年生存率は95%にも上ります。なかでも粘膜までの癌は、ほぼ100%なおります。
 大腸癌のかたちはいろいろありますが、進行癌であれば火山の噴火口のようなかたちをした潰瘍限局型(図-2)、早期癌ではポリープ状に盛り上がった隆起型が大部分をしめています。


■大腸癌の自覚症状

 早期癌では明らかな症状を認めませんが、進行癌では約50%の人が症状を認めます。代表的な症状は「下血」や「血便」で直腸癌やS状結腸癌に最もよくみられ、しばしば痔出血と間違われます。高齢者で「便が細くなる」などの便通異常に続いてイレウス症状がみられた場合、S状結腸癌を中心にした左側結腸癌を疑います。右側結腸癌は症状が発現しにくく、軽い腹痛や腹満感など不定な腹部症状を認めるだけで、癌が大きくなってから、「腹部のしこり」や「貧血」で発見されることも少なくありません。たびたび繰り返す「腹鳴を伴う腹痛」も大腸癌の症状の一つです。

■大腸癌の検査
 大腸癌の有無は次のような検査を行うことで診断して行きます。
便潜血反応検査(検便)/便の中の血液の有無を調べます。最近では、企業や地域の集団検診などでも広く行われています。便に血が混じっていることが解ったら、さらに詳しい検査を行います。便潜血陽性の人が癌である確率は約3%です。
注腸造影検査/肛門から大腸にバリウムを注入して、レントゲン撮影を行います。最近は、この検査を行わないで直接大腸内視鏡検査を行う病院が多くなりました。大腸狭窄がある大腸癌の場合(図-3)、内視鏡検査の前処置で大腸に穴があくこともあり、当院では大腸内視鏡検査を行う前に注腸造影検査を行うことが多いです。

 

大腸内視鏡検査/大腸癌の診断過程で最も重要な検査です。肛門から内視鏡を入れ、大腸の中を観察します。同時に病変の組織を一部取り(生検)、癌細胞の有無を診断します。また、ポリープがある場合、内視鏡的に摘除(ポリペクトミー)し、病理組織検査を行い癌の有無を診断します。
 なお、大腸内視鏡検査は、大腸全体をきれいに洗浄して盲腸までの全大腸を観察する「全大腸内視鏡検査」と、簡単に浣腸するだけで病気の最も多い直腸とS状結腸を観察する「S状結腸鏡検査」があります。
その他/大腸癌の治療方針を決めるため、癌の深さを判定する超音波内視鏡検査、大腸癌の肝転移、周囲への浸潤を診断する目的で腹部超音波検査、CT、MRI等が行われます。血液検査では貧血の有無などのほかに、大腸癌の腫瘍マーカーであるCEAもみていきます。CEAが高い場合は進行癌を疑います。なお、手術後、癌再発の判断にCEAの推移が有用になります。
 
 早期発見できれば、大腸癌はなおります。大腸癌検診(検便)を定期的に受けましょう。また、思い当たる症状がある場合はご相談ください。





発行/萩野原メディカル・コミュニティ